大きなノッポの古衝立(ついたて)
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これは初めてお話しすることです。
皆さんお気づきかと思いますが、千照館道場に古い大きな衝立(ついたて)があります。この衝立が道場にやってきたのは、道場が産まれるより少し前のことです。「由緒ある衝立なのですが、よかったら使ってください。」そう言われてやってきたのがこの衝立です。
ぼろぼろの衝立(ついたて)
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頂いた時もすでに古びていましたが、年々劣化していきます。もうすでに紙が耐用年数を超えているのです。普通にしていても、自然に風化してヒビが入り裂けていきます。
コツコツと修復
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裂けたところは、紙テープで傷口が広がらないように補修です。
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その上に、ぺたんとお酒のラベルを張ります。(笑)
初めのころは神社仏閣でもらう朱印を貼っていましたが、最近はそれでは追いつかないので酒のラベルです。皆さんからいただいたお酒のラベルをはがして沢山おいてあるので。
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ここも・・
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こうして・・・
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こうなりました。
なぜこんなに大事にこの衝立を補修して使うのか。
劣化した紙をはがして張り替えるなり、捨ててしまうなりすればいいのに、どうして直して使い続けるのか。
それはこの衝立の由来にあります。
松下幸之助さんの衝立(ついたて)
実はこの衝立は松下幸之助さんゆかりの品です。
大阪にあった「松下幸之助創業の家」の取り壊しの時に出てきた品物。それを引き取られた親族の方がわごいちに通われていて、「どうぞわごいちさんで使ってください」と譲ってくださったのです。
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衝立の裏面。
こちらはさらに劣化が激しく、数年前に全面張り替えをしたのですが、裏面にはがきが沢山貼りつけてありました。(幸之助さんの交際がうかがえる葉書だったかもしれませんが、廃棄してしまいました。)
私がこの衝立を直し直しつかっているのは、一つには「わごいちさんだったら大事にしてもらえるから」という譲り主さんへの義理もあります。しかしそれだけではないのです。それはこの衝立が「松下幸之助の創業の家」から来たということなのです。
今でこそ松下電器は世界のパナソニックとなり、世界中にその名を知られていますが、初めからそうであったわけではないでしょう。「松下?だれやお前?」そんな扱いを嫌というほど受けてきて、それを乗り越え続けてきた上での今だと思います。この衝立はそんな風景をじっと見守ってきたんじゃないかと想像するのが楽しいのです。
何事も未知のものを始めるときは、周りから「なんやそれ?」という容赦のない冷たい目線を浴びます。私がわごいちで「ハラモミ」を始めた時も、同じでした。嫌というほど「なにそれ、怪しい。」と言われました。「男の先生は嫌だ。女性の先生にお願い。」と私しかいないのに駄々をこねられたこともありました。今では考えられないことですがね。笑
創業の精神
「創業の精神」、私はこの衝立を見るたびにそう思い返します。創業時はほとんどの人にわかってもらえません。わかってもらうことを期待する方がおかしいのだとさえ思います。
わかってもらえないところから、どうにかしてわかってもらえるように工夫する。努力する。そこに面白さや生きがいを見つけていくのが「創業の精神」ではないかと思います。衝立を見ながら、幸之助さんとそんな話をしています。
流行りに乗っかりたい人は、そちらで楽しめばいいと思います。でも創業はそういうものではない。自分で未知なる道を見出していく。そこに生きる喜びと実感を見出していく。
松下幸之助さんを見守ってきたこの衝立には、もうひと頑張り、我々の創業も見守ってもらうつもりでいます。
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丹足道場千照館師範
三宅弘晃
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