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94歳の母を踏みたい

 

こんにちは、師範代の紙鳶です。

 

今日の稽古でとっても嬉しいことがありました。これまで丹足指導を始めて、数えきれない嬉しいことや喜びがありましたが、今日の嬉しさはまた格別でした。稽古中だというのに目頭が熱くなってしまったほどに。

 

今日の稽古に参加された会員さんだけではなく、皆さんにもどうしても伝えたくて勢いのままこのブログを書いています。

 

 

 

 

今年から、協会に大きな目標ができました。

「丹足感動貯金1000プロジェクト」(←クリック)です。

 

 

 

「稽古以外で誰かを踏んで、その時の感動をみんなで集めて貯金しよう!」というもの。

その感動貯金の一つ一つは、私たち協会の大切な財産になっていきます。

 

その目標が決まってから、誰を踏んだか、どんな様子だったかなどの話を、稽古中に皆でできるようになりました。皆さんそれぞれ色々で、会員さんの人となりを知ることもあって、また個々への丹足指導も変わってきます。

 

この感動貯金プロジェクトが、会員さんの丹足自体の膨らみになっていくのだということを、会員さんに教えてもらった今朝の稽古でした。

 

 

 

名古屋から毎月道場稽古に通われている70代の会員さん、丹足を習い始めて5年になります。ご自身の健康のため、いつまでも元気に暮らすため始められた丹足でしたね。

 

「覚えが悪くって、すぐ忘れちゃって、自分のことで精一杯なんですけど、でも皆さんに教えてもらうことがいつもいっぱいあって、ここに来るのがとても楽しいです。」

 

そう稽古の度に言われ、指導者はじめ、会員仲間の皆さんに「ありがとうございます」の気持ちを惜しみなく届けてくれる方です。

 

 

今朝、皆で「いつものように母を踏んだ」「主人を踏んでみたら手より気持ちいいと言ってもらった」そんな話をしているとき、その会員さんが手を挙げられました。

 

「94歳になる母を踏んでみたいんですけれど。」

 

 

お元気に自分で歩き、食事当番も担われているとは言え、94歳の方を踏むというのは私でも十分な慎重さが要ります。会員さんならなおさら怖さもあるでしょう。だけれど、「最近ちょっと足が痛いみたいで踏んであげたいんです。」その気持ちが仲間の踏んだ体験話を聞いて、大きくなっていかれたようでした。

 

 

「フワだけでまずはふくらはぎだけ踏んであげてみてください。優しく優しくフワだけで、短い時間で、そして様子を見てみてください。それで大丈夫そうならまたフワで少しずつ、そしてまた次回稽古の時に様子を聞かせてください。その次の丹足を相談しましょう。」

 

 

冒頭にそんな話をして、いつも通りの稽古をしっかりした最後に、フワでふくらはぎの練習をしてみました。お家でお母様を踏むための練習、と言えます。

 

 

踏まれる相手に何度も何度も踏まれ心地を聞きながら踏んでみる、実際にお母様を踏むように練習する。

 

その想いを受け取って、ペアの会員さんも何度も何度もアドバイスを伝える。

 

 

そうして「今、すごくいいですよ。」の声とともに、「今、初めて足裏に温かさを感じました。すごいです、ありがとうございます。」の声。

 

 

 

 

これだけでも嬉しい風景です。人を踏むことを実感として感じられた瞬間を得た、というのは本当に幸せなことですから。

 

だけども私の目頭を熱くさせたのはここからでした。

 

 

 

遠い目をされたんです。

いつもご自分の動きに集中していた視線が、踏まれている相手の体の中へ向いた瞬間でした。

 

 

 

 

 

相手を想うって色々だと思いました。踏みたい、という気持ちがこんなに丹足の質を変えるのかと正直驚き、その踏み姿の優しさと美しさに心が震える思いでした。

 

 

今日のあの光景を、皆で大きくしていきたいと心から願います。

 

 

 

 

 

 

井上紙鳶